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Posted by ミリタリーブログ  at 

2010年04月07日

ベトナム戦争時の米軍におけるトンプソンSMG

 こんばんは。ビッキー池田です。今回はベトナム戦争時の米軍におけるトンプソンサブマシンガンの使用例を紹介します。


 トンプソンSMGはご存じのとおり、第二次世界大戦時の米軍で使用された短機関銃です。ジョン・T・トンプソン准将によって開発されたもので、第一次世界大戦時の塹壕戦で役立つ銃というコンセプトでした。試作型のM1919(当時はこの型番ではなく単にトンプソンサブマシンガンと呼ばれていました)が完成した1919年には第一次世界大戦が終了しており、米軍では採用されませんでした。

 その後、民間向けに作られたM1921が郵便公社に採用され、郵便公社の警護を担当した米海兵隊にも給与されます。海兵隊はこのM1921を中南米でのいわゆるバナナ戦争でも使用しました。なお、M1921は民間で広く売られていたため、アイルランド紛争におけるIRA(アイルランド共和軍)やバナナ戦争におけるニカラグア軍においても使用されていたことが知られています。

 その後、.45ACP弾より強力な.45レミントン‐トンプソン弾を使用する試作型のM1923、民間向けのセミオート射撃モデルのM1927が作られた後の1928年に米海軍と米海兵隊において発射速度を遅くしたM1928が採用され、第二次世界大戦勃発後に改良型のM1928A1が採用されました。その後、1942年に改良型のM1、1944年にその改良型のM1A1が採用されました。M1928以降のモデルは米軍以外に第二次世界大戦時のイギリス軍、フランス軍、スウェーデン軍、中華民国軍、ソ連軍などでも使用されていました。なお、トミーガンという愛称はイギリス軍に使用されていたためです。

 第二次世界大戦後も朝鮮戦争やインドシナ戦争、そして、ベトナム戦争でも使用されました。ベトナム戦争で使用されたのはM1A1もしくはM1のようです。



 ベトナム戦争でトンプソンSMGというと米軍よりも初期の南ベトナム軍やモンタニヤードによって使用されていたのが有名かと思います。

 南ベトナム陸軍レンジャー部隊(BDQ)と軍事顧問です。先頭のレンジャー隊員はユニバーサルキャリングストラップをトンプソンM1A1のスリングにしているようです。また、軍事顧問は右胸に金属製の南ベトナム軍レンジャーのスキルバッジをつけています。


 モンタニヤードもしくは南ベトナム陸軍の一般部隊でしょうか?トンプソンSMGと共にM1カービンも写っています。


 初期の南ベトナム軍とモンタニヤードが使用していたということは当然彼らを訓練していた軍事顧問やグリーンベレー隊員も当時使用していたことになります。しかし、ベトナム戦争では初期に限らずトンプソンSMGは使用されていました。

 正確な時期は分かりませんが、CCN(Command & Control North)が編成されたのは1967年のため、それ以降に撮影された写真ということになります。CCNの看板の前で写真を撮っていますが、彼はCCN所属のグリーンベレー隊員ではなさそうです。CS/FRP-1と思われるフライトスーツと左胸のパッチから、海軍か海兵隊のエアクルーではないでしょうか。海軍や海兵隊の航空部隊でも時々トンプソンSMGを持った写真があります。


 1968年1月のテト攻勢時の米陸軍4等特技兵です。どういうわけかストックのないトンプソンSMGを使用しています。M1952Aボディアーマーを着用しているようです。


 同じくテト攻勢時の米海兵隊です。通信兵のようですが、彼もストックのないトンプソンSMGを使用しています。M1955ボディアーマーの初期型(ポケットが無いタイプ)を着用しているようです。


 ベトナム戦争中期のグリーンベレー隊員もしくはLRRP隊員でしょうか?ジャングルファティーグの袖にポケットを移植もしくは増設しています。中国製の56式小銃(AK-47)用のチェストリグにトンプソンSMGのマガジンを入れているようです。トンプソンSMGには自作のスリングを付けているようで、スリングに肩パッドが確認できます。


 Ranger隊員のようです。なんと服がERDLグリーンリーフ迷彩の戦闘服なのに、いまだにトンプソンSMGを使用しています。しかし、装備品を付けていないので、実際の任務では使用しておらず、訓練中の写真や鹵獲兵器を持っての記念写真かもしれません。ベトコンにも南ベトナム軍から鹵獲したトンプソンSMGやフランス軍が残していったトンプソンSMGが使用されていました。


 なお、ベトナム戦争でトンプソンM1やM1A1以外にM1928もしくはM1928A1も使用されたという話がありますが、自分は確認したことがありません。以下の写真は1967年から1968年頃の米陸軍のADVISORY TEAM 75から南ベトナム海軍の第17河川艇中隊(17th River Boat Company)へ派遣された軍事顧問の装備を再現した写真で、M1928A1(M1928?)を持っています。

 左腕に付いた「VN NAVAL ADVISOR」のスクロール型パッチとニット帽が特徴的です。


 トンプソンSMGは1970年代中期まで米軍では予備兵器として保管されていました。それ以降も各地の紛争などで使用例が見られ、ごく一部では現在でも使われているようです。最後にトンプソンM1A1の基本スペックを書いておきます。

トンプソンM1A1
全長:813mm
銃身長:267mm
重量:4740g
使用弾薬:.45ACP(11.43mm)
マガジン装弾数:20発、30発
作動方式:シンプル・ブローバック方式、オープン・ボルト撃発方式
発射速度:700発/分
銃口初速:280m/秒
有効射程:100m~150m



 以下の記事も参考にどうぞ。
米軍及び南ベトナム軍とUZI
ベトナム戦争時の米軍におけるステンガン


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Posted by ビッキー池田  at 00:00Comments(6)銃関係

2010年02月02日

ベトナム戦争時の米軍におけるステンガン

 こんばんは。ビッキー池田です。今回はベトナム戦争時の米軍におけるステンガンの使用例について考えてみます。


 ステンガンは言うまでも無く、第二次世界大戦時にイギリスで開発されたサブマシンガンです。第二次世界大戦時にはイギリス軍以外にカナダ軍などの英連邦諸国の軍隊やフランス軍にも使用されました。戦後もイギリス軍はしばらくmk.IIをL50、mk.IIIをL51、mk.VをL52として使用し、イスラエル軍は中東戦争で、インド軍は印パ戦争でステンガンを使用したのが知られています。その他にも様々な国でステンガンは使用されました。


 さて、ベトナム戦争で米軍が使用したステンガンはステンmk.IIとステンmk.IISと思われ、2タイプのストックのものが使用されたようです。ステンmk.IIはステンSMGの初期生産型であるステンmk.Iの改良型で、WWII中のステンガンの最多生産モデルでした。そして、ステンmk.IISはステンmk.IIのサイレンサー(消音器)付きモデルです。ベトナム戦争で米軍が使ったものはアメリカ製のライセンス生産品とも言われていますが、詳細は分かりません。



 なお第二次世界大戦時にも米軍でステンガンが使われたと聞きますが、知識不足なので今回はベトナム戦争における米軍での使用例に絞り込みます。



 トミーガンやグリースガンと一緒に写っているので、ベトナム戦争初期での使用かと思いきや・・・。



 グリーンリーフパターンの戦闘服やM1967マガジンポーチと一緒に使われているので、結構遅い時期まで使われていたようです。おそらく消音器がなかなか高性能だったために長期に渡って使用されたのだと思います。写真の詳細は不明ですが、ステンSMGを使用したのはグリーンベレーとレンジャーが主なはずなので、そのどちらかではないでしょうか。



 ベレーも服もタイガーストライプ(Tadpole Sparse Patternと思われます)なベトナム人の2人組みがステンmk.IISを使用しています。この写真も詳細は不明ですが、MACV-SOGに訓練されたモンタニヤードではないでしょうか。


 次の3枚の写真はMACV-SOGのCCN(Command & Control North)所属のグリーンベレー隊員です。同じときに撮られた写真だと思いますが、それぞれ装備が興味深いので3枚ともあげておきます。

 第5特殊部隊群のベレーフラッシュ付きのグリーンベレーを被り、ジャングルファティーグにポケットハンガーパッチを取り付けています。ポケットハンガーパッチが何か確認できませんが、やはりCCN関係のものかと思います。



 この人が着ている服は1-0ジャケットとジャングルファティーグのトラウザーズと思われます。1-0(ONE ZERO)とはMACV-SOGの偵察チームの指揮官のことで、1-0ジャケットは1-0に使用された黒いジャケットです。この服は生地がこすれる音がうるさいそうで、実戦ではほとんど使用されず基地の中などで着用されました。



 そして、この人はタイガーストライプパターンの服を着て、茶革製のローカルメイド品と思われるホルスターを装着しています。


 なお、ベトナム戦争時に米軍以外でステンSMGが使われたかという点については知識不足でよく分かりませんが、インドシナ戦争では北ベトナム製のステンSMGのコピーが使用されていたようです。よって、北ベトナム軍やベトコンでの使用があったかもしれません。また、第二次世界大戦でオーストラリア軍はステンSMG及びオーストラリア製のオーステンSMGを使用していたので、ベトナム戦争でも使ったかもしれませんが、未確認です。ただ、オーウェンSMGやスターリングSMGを当時オーストラリア軍は使用していたので、わざわざステンSMGを使う必要はなかったのではないでしょうか。


 今回の記事はコレクターのM.C.YASUDA氏の助言により書くことができました。ご協力ありがとうございます。それでは、最後にステンmk.IIとステンmk.IISの基本スペックです。

ステンmk.II
全長:895mm
銃身長:196mm
重量:3260g
使用弾薬:9mm×19mm
マガジン装弾数:32発
作動方式:シンプル・ブローバック方式、オープン・ボルト撃発
発射速度:550発/分
銃口初速:365m/秒
有効射程:150m~200m

ステンmk.IIS
全長:900mm
銃身長:90mm
重量:3480g
使用弾薬:9mm×19mm
マガジン装弾数:32発
作動方式:シンプル・ブローバック方式
発射速度:450発/分
有効射程:50m~100m



 以下の記事も参考にどうぞ。
ベトナム戦争時の米軍におけるトンプソンSMG
米軍及び南ベトナム軍とUZI


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Posted by ビッキー池田  at 00:04Comments(5)銃関係